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図面作成システムと図面管理システムの連携 | Building-Box

作成者: 01|2024 7月

― はじめに

図面作成はCADソフトウェアなどの図面作成システムを用いて行われています。一方、図面管理システムは制作された図面や関連技術資料を一元管理するシステムのことをさします。両システムを連携させることで、図面の作成から管理、共有までのプロセスが効率化され、建設プロジェクトの業務効率が向上します。本記事では、この2つのシステムを連携させたときのメリットについて紹介します。

 

― 図面作成システムとは

建築図面作成ソフトウェアは、その名の通り、図面を作成するためのシステムです。代表的なものとしてCADが挙げられます。CADComputer Aided Design、キャド)は建築や製品設計の分野で重要な役割を果たしています。CADは、建築家や設計者が建物の構造や外観、内部レイアウトを詳細に設計するために利用されるシステムです。また、施工会社もCADを使用して、最終的な建築物の詳細な仕様を含む施工図や完成図を作成します。
 
CADの歴史は比較的新しく、1960年代に初めて飛行機の設計用に開発されたと言われています。その後、建築、自動車、製造業など広範な分野で使用されるようになり、時代を追うごとに機能も進化していきました。初期のCADは主に平面図を作成する2次元(2D)ツールでしたが、立体図を作成できる3次元(3DCADソフトウェアが主流となりました。具体的なCADの種類としては、次のようなものがあります。
 
  • 2次元CADソフトウェア:主に平面図や断面図などの2次元的な図面を作成します。建築設計において基本的な図面や詳細図の作成に広く使用されます。
  • 3次元CADソフトウェア:立体的な物体や建築物のモデルを作成し、設計や可視化を行います。建物の外観や内部構造をリアルな立体映像で表現することができます。
 
CADは単なる図面作成ツールにとどまらず、建物の耐荷重性やエネルギー効率などの計算、最近ではクラウドベースでの共同作業が可能な機能が拡張されています。さらに、CADの進化版としてBIMBuilding Information Modeling、ビム)という最新技術が登場し、設計や建設の全体像を包括的に管理、視覚化することが可能になっています。

 

― 図面管理システムとの違い

図面管理システムは、CADデータや関連技術資料を一元管理し、図面と関連資料を紐付け、バージョン管理や進捗管理ができる機能を実装したシステムです。図面作成システムはCADを用いて図面を作成することを目的としたツールに対し、図面管理システムは制作された図面を管理することに特化している点に違いがあります。
 
  • 図面データの一元管理:CADデータや関連する技術資料などの情報を一元管理します。
  • バージョン管理:図面や関連する文書のバージョン管理に加え変更履歴の追跡、過去のバージョンへのアクセスなどが可能です。
  • 進捗管理:プロジェクトの進行状況を可視化し、図面や関連文書の承認やプロジェクトの進捗管理を効率的に行います。
 
これらの機能をもった図面管理システムはオンプレミス型とクラウド型の大きく2つのカテゴリーに分類されます。
 
  • オンプレミス型:自社のサーバーにシステムを構築し、運用するタイプです。セキュリティ対策を自社のポリシーに合わせて行うことができ、データの安全性を確保できます。また企業固有のニーズに応じて柔軟にカスタマイズできるといった特徴があります。
  • クラウド型:インターネット上にシステムが構築され、サービスとして提供されるタイプです。場所を選ばずにアクセスでき、リアルタイムでの情報共有や図面に対する注釈や画像の添付が可能です。初期投資が抑えられるのも特徴として挙げられます。
 
図面管理システムを選定する際には、企業のニーズや使用するCADソフトウェアに応じて選定することが重要です。

 

― 図面管理における課題

ここまで図面作成システムと図面管理システムについてみてきました。では、図面管理が不十分であると、どのような課題が生じるのでしょうか。
 
  • 図面の増加に伴い検索性が低下:作成した図面の数が増えると、特定の図面を迅速に見つけ出すことが困難になる場合があります。特に、図面に関連付けられた詳細情報が欠けていると検索性が低下し、プロジェクトの進行が遅延する可能性があります。
  • 多重に製図される:図面管理が適切に行われていない状況では、同じ図面が何枚も作成されるという非効率な事態が生じる場合があります。
  • 最新の図面が判別できない:適切なバージョン管理が行われていない場合、どの図面が最新版であるかを迅速に判断することができなくなります。古いバージョンの図面が使用され、設計ミスや情報の不整合を生じさせる可能性があります。
  • 取引先に渡す図面を間違える:図面の整理が不十分な場合、取引先に提供する図面を間違える可能性があります。関係者間でコミュニケーションに混乱や誤解が生じ、取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

― 図面作成システムと図面管理システムの連携で効率化

図面作成システムだけでなく、図面管理システムを導入し合わせて活用することでヒューマンエラーの抑制、データのバックアップとリカバリ、図面承認までのワークフローの効率化などを図ることが可能です。
 
一例を挙げると、設計者が図面を作成した後、関係者に対して承認依頼を送信、進捗状況をリアルタイムで確認するといったフローが実現します。図面の承認プロセスを効率化し、時間と手間を削減することで、関係者間でのコミュニケーションも円滑になります。
 
  • ヒューマンエラーの抑制:CADなどのソフトと連携することで、データの手動入力を減らし、登録する図面を間違えるといったヒューマンエラーを抑制します。
  • データのバックアップとリカバリ:図面データの定期的なバックアップが容易になり、万が一データを損失した時でもリカバリが可能です。
  • 図面の検索性向上:キーワードや製品分類、履歴等、多角的な図面検索が可能となり、必要な図面への迅速なアクセスが実現できます。
  • 管理効率の向上と設計ミスの防止:変更履歴や最新版の表示、採番機能などを通して効率的な図面管理が可能となり、古いバージョンを使用するといった設計ミスを防止できます。履歴を追跡し、規制や監査要件に対応することも可能です。
  • 関係者間でリアルタイムに図面データを共有:クラウド上でリアルタイムに図面データを共有することができ、チーム全体での図面共有が正確かつ容易となることで、設計プロセス全体の効率化と生産性向上が期待できます。
  • 図面承認までのフローを効率化:通知機能や図面ステータスの見える化を通して関係者間での正確なコミュニケーションを促し、図面ステータスの確認工数削減といった承認プロセスの効率化を図ることが可能です。

 

― まとめ

図面作成システムはCADソフトウェアを用いて図面を作成し、図面管理システムはこれらの図面や関連する技術資料を一元管理、バージョン管理、進捗管理などを行うといったそれぞれのシステムの違いをご紹介しました。図面作成システムと図面管理システムの両方を上手く活用し連携させることで、プロジェクトの進行がスムーズになるだけでなく、管理の負担軽減、設計や施工品質向上などが実現します。企業のニーズや使用するCADソフトウェアに応じた図面管理システムの選定がこれらのメリットを最大限に引き出す鍵となります。